アトモキセチン(先行薬品名:ストラテラ)

ADHDの多動、衝動性、不注意などに対して用いるお薬です。脳(我々の身体)がドーパミンをどれほど希求するのかという点に関しては、具体例を用いて外来で(わかりやすく)説明しております。脳の前頭前野の神経終末にあるノルアドレナリントランスポーターを選択的に阻害し、ノルアドレナリンあるいはドーパミンの再取り込みを阻止することで、これらの神経伝達物質の濃度を上昇させます。嚙み砕いて言うなら、家計(脳)にお金(ドーパミン)を貯めておき満足感が得られるようにするため、税務署の機能を調整し税金の再徴収を控えてもらう、という具合です(実際に今の日本は2-3年間限定でも消費税を5%に減税措置をとると、景気がかなり改善し、トータルでの税収も逆に増えるのですが・・・その話は別の機会にまた・・・)。アトモキセチンの略称はATXやATMです。

Q. 依存性はあるの?

A.線条体と呼ばれる部分と、依存形成にかかわる側座核と呼ばれる部分ではドーパミン濃度は上昇しないので、依存や乱用につながる危険性は極めて低いとされています。

Q. トランスポーターとは?

A.膜という境界の前後での濃度勾配や電気化学的勾配に逆らってイオンや基質を能動的に移動させる膜貫通タンパク質です。ポンプとも呼びます。

Q. 副作用は?

A. 成人における臨床試験によると、気持ちわるい(悪心)46.9%、食欲低下20.9%、眠気(傾眠)16.6%、口喝13.8%、頭痛10.5%となっており、心拍数の増加、血圧の上昇を引き起こすリスクも報告されています。小児においては、①腹部症状・おなかの気持ち悪さ、②頭痛、③心臓がドキドキする(動悸)、④昼間の眠気、⑤足先が冷たくなる・足先の色が悪くなる を認めることがあります。当院では、リスク&ベネフィット(メリットとデメリット)を勘案して内服の開始を提案しています。

Q. 薬の形状と飲み方は?

A. 5mg、10mg、25mg、40mgの錠剤とカプセルがあり、錠剤を内服できないお子さんのための内用液もあります。これらを組み合わせ、第1段階は0.5mg/kg/day、第2段階は0.8mg/kg/day、第3段階は1.2mg/kg/dayと1週間ずつ増量していきます。例えば体重が30kgのお子さんですと、最初の1週間は1日あたり15mg、次の1週間は1日あたり24-25mg、その次の1週間は1日あたり35-36mgを目安に内服していただきます。上限は1.8mg/kgとされており、1.2mg/kgから1.8mg/kgの間で「効果が見られ副作用のない用量」を探しだし、その量で維持を図ります。他の薬剤との相乗効果などもあるので1.2mg/kgまで増やさなくても十分な効果が得られるケースも多いです。

Q. アトモキセチンとインチュニブ、どちらを選ぶべき?

A .ADHDの第一選択としてアトモキセチンと同様にグアンファシン(先行薬品名インチュニブ)が選択されるケースも多いです。グアンファシンは元々血圧のために開発された薬剤だからなのか血圧が下がることがありますので、「朝起きにくい」「血圧が低め」の患者さんは、こちらのアトモキセチンの方を選択することが多いです。

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