保育所等訪問支援とは①
発達外来での診療中に「訓練が必要です」「児童発達支援を利用しましょう」と訓練や児発の利用を"処方"するケースと同様に「保育所等訪問支援を利用しましょう」と判断するケースも最近は少なくありません。患者さん側からは「うちの子は小学生なのですが『保育所』ですか?」と質問されることも多いので、本日は保育所等訪問支援について少し述べてみたいと思います。
保育所等訪問支援の重要性
インクルージョンを進めるには保育園や学校等の施設スタッフが安心できるよう、患者さんの特性に応じた環境調整や関わり方を施設スタッフが身につける必要があるとされています。またそのような関りには、ある程度専門的な支援が必要であることも確認されています。インクルージョンを謳っている我が国は「保育所等訪問支援がこのインクルージョンを推進する1丁目1番地の重要な事業であり全国的に普及させていく必要がある」と述ているのですが、1丁目1番地の重要な施策の割にはこのシステムの知名度は相変わらず低いのも現状です。
ネーミングが悪い?
児童発達支援や放課後等デイサービスと同じ「障害児通所支援」の一類型ですが、サービス名に「保育所等」とあるので、対象が保育所のみと勘違いされてしまいます。対象は「保育園」「幼稚園」「こども園」のみならず「小学校」等も含まれます。先進的な地域では放課後の学童クラブ(地域によっては「育成」と呼ぶ)にも支援が入ることもあるそうですが、ここ大分では、まだ・・・。私見ですが「保育所等」という名前のまま小中学校にも支援に入ることは違和感を抱かれやすいですが、もし名称が「学校等訪問支援」で保育所等にも支援に入ることは違和感が抱かれにくいのではないでしょうか。だとすると国はネーミングを「学校等訪問支援」に変更するべきなのかもしれません。
「集団生活の中でこそ発生する課題」に対応する
障害のある子どもの発達支援は、これまで施設や事業所という特別な場所への通所で提供されていました。しかし、発達上の課題は保育所や学校等の集団生活の場面で気づかれることが多いこと(家庭や個別対応では問題が見えにくいことが多いこと)、通所支援を終え保育所や学校等へ移行した後のフォローアップ体制が不十分であること(フォローアップが制度上確保されていないこと)、障害特性の個人差が保育所や学校等集団生活の場の職員を疲弊させること、保護者が「〇〇の事業所では良い子にできるのに!」と保育所や学校等に対してもどかしさを感じること、などの課題があることも事実です。支援はお子さん個々人により異なるのは当然ですので、お子さんにとって最適な支援方法を保育所や学校等の職員に、支援の専門職の人間が伝授する、それが保育所等訪問支援なのです。
Q.誰が訪問支援を行うのでしょうか?
A.児童指導員や保育士、作業療法士や言語聴覚士などのリハ士(訓練士)、心理士などが担当し、上述の支援の「伝道師」となります。訪問支援員は、保育所等の訪問先に出向き、スタッフが単独で支援を実施する必要があることから、発達の支援に関する相応の知識と経験が要求されます。児童発達支援事業所モデラートとアレグロは保育所等訪問支援事業所としても登録しています。モデとアレグロの職員だけでなく、府内大橋こどもクリニックのOT/ST/心理士の各スタッフも訪問支援スタッフとして登録していますので、モデラートやアレグロからの派遣として保育所等訪問支援に伺うことも可能です。お気軽にお問合せください。
Q.保育所等訪問支援の開始には何が必要?
A.自治体にもよりますが、大分市では児童発達支援や放課後デイの利用開始と同様に『要否意見書』を障害福祉課の窓口に提出する必要があります。この要否意見書は医療機関で作成することが多いですが、当院では待機期間を短くしており、お電話から数日後には来院いただき診察し意見書を発行しております(通常の発達外来の初診までお待ちいただく必要はありません)。また相談支援事業所という、計画書を作成してくれる事業所とも繋がる必要がありますが、患者さん側がらの要請があれば、フットワークが軽く腕の良い相談支援事業所を当院から紹介することもできます。お気軽にクリニック 097-585-5033 にお問い合わせください。
Q.保育所等訪問支援をもっと知りたい!
A.厚労省がまとめてくれた 資料 がありますので参考にしてください。ほかご不明な点は各自治体の福祉担当部署(大分市の場合は大分市障害福祉課 097-537-5658 )が説明してくれますのでお気軽にお問合せ下さい。保育所等訪問支援に関しては当方も質問を受けることが多いので、こちらのサイトでも今後また言及して参りたいと思います。